監査で使えるコネタ製作所

ある東海地方の会計士試験合格者が見つけた監査に役立つコネタを書き綴ります…

小売業大打撃!新・収益認識基準で売上高が大きく減少するかもしれないある「条件」とは?

皆さんこんにちは。茶そばです。

 

収益認識といえば、我が国では企業会計原則にあるとおり「実現主義」が長らく採用されてきました。

非常にシンプルな考え方で、財の移転又は役務の提供と対価の受領の時点で収益を認識するというものです。

 

 

ところが、先般ASBJ(企業会計基準委員会)から収益認識に関する会計基準の草案が発表されました。

これは従来の実現主義を大きく覆す、我が国初の収益認識に関する包括的な会計基準として注目されています。

 

ボリュームもかなりあるので、読む気が失せてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら、我が国の実務に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

今回は、従来あまり注目されてこなかった「売上返品」について取り扱いたいと思います。

 

現行実務上、売上返品が起きたとしても、実際に返品がなされたときに収益の取り消しを行うにとどまります。

例) 売上返品 ×××/売掛金 ×××

 

もちろん会計上取引が起きてから仕訳を起こすということは何ら問題はありません。

ところが、小売業、特に通販業界などでは「返品を受け付ける旨」を顧客に通知していることがよくあります。

あなたも通販で購入した商品が、想像と違ったため返品したご経験はありませんか?

 

返品条件等を付与していれば、商品を売った段階では必ずしもすべてが収益として計上できるとはいえません。

返品条件を使って顧客が商品を返品すれば、それは収益の取り消しになるからです。

もしも、毎期大体これぐらいは返品されてくるだろうということが見込めるならば、いったん収益を総額で計上するよりも、返品の見積もり金額を控除した額を、収益として計上し、後々収益の額を確定するのが理論的です。

 

収益認識に関する会計基準では、返品契約が付された商品の対価のことを「変動対価」であるとしています。

変動対価とは「顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分」をいいます。

返品条件が付されていて、返品率を適切に予測できるならば、顧客から受け取る対価は一定ではない。

返品率の分だけ対価が動くのであるから「変動対価」であるとしているのです。

では、実際の仕訳を見てみましょう。

 

・返品条件を付与して商品を売り上げたとき

売掛金 100/売上  80

      /返金負債 20

→返品の見積もり分は、将来返金しなければならないため負債計上。

売上原価 64/棚卸資産 80

返品資産 16/

→返品の見積もり分は、将来資産を受領できるため資産計上。

 

・実際に返品があれば、以下のような仕訳になります。

返金負債 20/売掛金 20

棚卸資産 16/返品資産 16

 

・返品がなければ以下のような仕訳になります。

返金負債 20/売上 20

売上原価 16/棚卸資産 16

 

<おわりに>

いかがでしょうか。

従来ならば計上できていた売上が計上できなくなる分、売上が大きく減少することが十分考えられます。

また、売上にも見積もりの要素が介入するため、不正が起きやすくなります。

返品率をどう見積もるかであるかとか、返品資産を計上しても、返品されてきた商品がその後本当に売れるのかどうか…。

監査上も、十分留意しなければなりませんし、会社側の会計処理にも気をつけていただかなければならない点です。

 

返品条件を付して商品を売ることは、顧客拡大を図る一つの戦略です。

しかし今後は、従来の返品率や、返品されてきた商品の状況を考えた上で、返品条件の見直しが必要になるケースもあるかもしれません。

 

 

 

源泉所得税の計算は2通り!合わないからと言って慌てない

皆さんこんにちは、茶そばです。

 

今回のテーマは「源泉所得税」です。

会計士試験を受けられた皆さんならば、もうお手の物?ではないでしょうか。

 

最近の論文式試験では、租税法の中で源泉所得税が登場することも珍しくありません。

しかし、元々問題に所与の数値を単に差し引きするだけで、金額そのものの計算はあまりしたことがないのではないでしょうか。

 

実は私も、実務に出てから源泉所得税の計算方法を知りました。

といっても何ら難しいことはありません。

計算に必要な知識はたったの2つ!

源泉徴収税額表」と「財務省告示」です。

 

1.源泉徴収税額表を用いて源泉徴収税額を求める方法

 

皆さんはこんな表を目にしたことはありませんか?

 

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 これは国税庁のHPに掲載されている「給与所得の源泉徴収税額表」を抜粋したものです。

実は、源泉徴収税額はこの表を用いて決めています!

 

なんだか所得税の勉強をしたことがある方にとってみたら、とても簡単に思えるのではないでしょうか。

長ったらしい計算式があるのではなく「その月の給与」を、表に当てはめて源泉徴収税額を計算するだけです。

 

この方法によれば、誰でも簡単に計算できますし、すぐに税額が求められます。

源泉所得税は税法上、給与を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。

もしもこれがややこしい計算式ならば誰も、そんなに早く納付することはできないでしょう。

そこで、誰でも簡単に源泉徴収税額を求められるように作られたのがこの「源泉徴収税額票」なのです。

 

 

2.財務省告示を用いて源泉徴収税額を求める方法

しかし源泉徴収税額表はよいことばかりではありません。

数人程度の従業員ならば、この表に当てはめて計算すればよいのですが、何百人何千人と給与を支払う大企業ならば、こんな表に当てはめている時間の方が無駄です。

しかも今時パソコンを用いて給与を計算しているにもかかわらず、表に当てはめるなどと言うアナログなことができるでしょうか。

 

そこで考え出されたのが「電子計算機等を使用して源泉徴収税額を計算する方法を定める財務省告示」というものです。

端的に言えば「本当なら源泉徴収税額表を使わなければならないけれど、パソコンで給与計算をするならある算式を使って求めてもかまわないよ」という財務省からのお達しです。

 

この方法によると、計算式で源泉徴収税額を求めることができるためパソコンのような大量に同じ処理ができる機械にとても適しています。

事務手続が簡単になるというメリットがあると言うことですね。

とはいうものの、税額表を用いて計算した場合とズレが出るものといわれています。

それゆえ、原則である「税額表」を使って計算された源泉徴収税額と、財務省告示を使って計算された源泉徴収税額との差額は「年末調整」で清算するとされています。

 

計算式はやや複雑ですので、ここでの説明は割愛しますが、Excelファイルにまとめてみました。

https://yahoo.jp/box/A8xMSj

どうやって計算されているかを、確認するのによいかと思います。

 

<おわりに>

源泉徴収税額を1つ取っても、2つも方法があります。

監査をしているときに、いつものやり方ではどうもうまくいかないと言うときには、視野を広げて、他の方法を探してみてはいかがでしょうか。

 

<参考リンク>

平成29年分 源泉徴収税額表|パンフレット・手引き|国税庁

平成30年分 源泉徴収税額表|パンフレット・手引き|国税庁

→暦年ごとに改正されるので、注意してください。

 

人件費の再計算がつまらないと思っているJ1へ贈る!監査で人件費を細かく見る2つの理由!

 

皆さんこんにちは。茶そばです。

 

最近は時期的に内部統制監査を担当することが多く、会社の方とヒアリングをしたり、証跡を集めたりしています。

そんななかで私の嫌いな項目が一つあります。

それは「人件費」です。

嫌いだからこそ避けていたのですが、最近改めて「どうしてこの手続をやるんだろう」と少し考えてみました。

そうしたら意外と重要だ!ということに気づいたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

 

 

財務諸表監査を行う上で、人件費はそれほど重要視されません。
せいぜい増減分析や、一人当たりの給与の分析を行う程度で、細かく手続を行っている現場は少ないかと思います。

なぜそのようなことができるのかと言えば、人件費はほとんどのプロセスを内部統制に依拠しているからです。
だからこそ、監査人は財務諸表監査ではなく「内部統制監査」の一環で人件費プロセスを確認します。

もしも、内部統制に依拠できないとなれば、財務諸表監査以前に違法行為(労働基準法に従って人件費を支払っていない)の認識と言うことになるでしょう。
内部統制監査、財務諸表監査どちらも、適正意見を出すことは難しいと考えられます。

 

 

ただ、人件費をごまかそうと思ってもそれは難しい芸当です。
なぜなら、人件費にはたくさんの外部者が関わっているからです。
人件費を直接受け取る「従業員」、税金や保険関係の「役所」、そして労働者の権利を守る「労働基準監督署」。
これほど外部からがんじがらめにされている業務プロセスも、珍しいのではないでしょうか。
ゆえに人件費で不正を使用と思ってもなかなか難しいのです。
(もっとも、人件費の金額は合わせてきても、本来製造原価のところを販管費に入れて粗利率を高めるために行う科目の付け替えや、固定資産の取得に要した支出だと称して建設仮勘定へ含めてしまうと言うような会計的な不正の余地は残ります。また倒産間際の会社が、人件費を違法に計算することも考えられますが、ほとんど出くわす機会はないかと思います。)

 

 

結論からいえば、人件費の金額を不正することは難しいと言うことです。
ではなぜ、私たちは、内部統制監査でわざわざ人件費プロセスを確認するのでしょうか。
これは2つの理由があります。


1.人件費の計算もできないような内部統制は、重要な不備があると考えられるから。
昨今、労働問題にうるさい日本社会。人件費の計算は法律でガチガチに決まっているため、誤ることはほとんどありません。

それに加えて、手計算を行っているような会社は現在見たことがありません。自前で計算するにしても、ソフトウェアを使うのが一般的です。

要するに、誰でも正しく計算できる環境が整っているにもかかわらず、人件費の計算もできないようでは、内部統制に重要な不備があると考えられるのです。


2.内部統制監査をしなくても、結局同じことを財務諸表監査でも確認するから。
仮に内部統制監査をスキップしたとしても、人件費を財務諸表監査で手続きしようとなれば、結果的に内部統制監査と同じ事をします。

 

内部統制監査では、ウォークスルー(内部統制の整備状況評価)やTOC(内部統制の運用状況評価)を行います。

これらは、会社が行っている内部統制を監査人自らが証跡を用いて後追いするという手続です。

人件費プロセスの最大のメインは、「給与計算」になりますから、内部統制監査上再計算がメインです。

ここで内部統制が有効と認められれば、他の人件費も正しく計算されているという心証を得られるため、財務諸表監査では人件費について特別詳細な手続は検討しません。

 


仮に内部統制監査を実施しなければ、財務諸表監査では何らかの詳細テストを検討する必要があります。

とはいうものの、人件費の最大のメインは「再計算」ですから、やはりどうしても内部統制監査で行う手続と同じようなことを行わざるを得ません。

結局、内部統制でも財務諸表監査でもやることが同じならば、期末の忙しいときに実施するのではなく、比較的時間に余裕があるタイミングで内部統制を確認してしまうのが効率的であり、1.の趣旨を踏まえると効果的であるといえるのです。

 

<おわりに>

皆さんは、人件費の再計算ってつまらないなと思うことはありませんか。
私も人件費の再計算はそんなに好きではありません。
しかし将来独立しようと思ったときに、給与の計算方法も知らないとお客さんを獲得することは難しいでしょう。
監査的側面を押さえるのはもちろん、実際の計算方法の細かいところを押さえていくのもまた、人件費の再計算の醍醐味かもしれませんね。

 

2017年11月6日 追記

大事なことを書き忘れていました。

人件費を細かく見る理由に「統制に依拠した監査」を実施するためという大切な理由です。

(実務上だと当たり前すぎる話ですが…)

人件費は膨大な件数に上るため、いちいち詳細テストを実施するわけにはいきません。

だからこそ、内部統制の有効性を確認して、統制に依拠した監査を実施するのです。

ちなみに統制に依拠することによって、本来ならばより細かく監査手続を実施しなければならないところ、「内部統制が有効であるから、人件費は適切に計算されている」という推定の下、効率的な監査ができると言うことです。

現物の寄付を行った場合の会計上及び法人税法の取り扱い

1.質問事項
 私の会社は近所の少年団へ、飲料水を寄付することを検討しております。このとき用いる勘定科目について教えてください。
 なお仕入先は問屋であり、掛仕入をしているため飲料水そのものの領収書はありません。また当該取引は、寄付に該当し宣伝目的で行うものではありません。

 

2.回答事項
① 会計処理について
 おたずねの取引は、以下の通り仕訳を行うものと考えられます。
(1)仕入
(借方)仕 入 ××× (貸方)買掛金 ×××
(2)寄付時
(借方)寄付金 ××× (貸方)他勘定振替高 ×××

② 決算書上の表示について
 損益計算書上、売上原価の部に「他勘定振替高」を表示します。

③ 法人税法上の取り扱いについて
 当該寄付金は国等あるいは特定公益増進法人などに対する寄付金ではないため、一般寄付金に該当します。したがって、法人税法上他の一般寄付金と合計し、一定限度額以上を超える部分は損金に算入されないことに留意してください(法人税法第37条1項)。
 領収書の取り扱いですが、当該寄付金は一般寄付金ですから、少年団へ寄付した際、相手方から何らかの書面を受領する必要はありません。

 

3.解説
 寄付金とは「内国法人が」する「金銭その他の資産または経済的な利益の贈与または無償の贈与」をいいます(法法37条7項)。また「広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く」とされています(同法同条同項括弧書き)。本事案では、当該取引が寄付金に該当するか、広告宣伝費に該当するかが論点となります。
 広告宣伝費に該当するか否かについては、「その支出の対価として提供された役務が,客観的にみて,その受け手である不特定多数の者に対し当該法人の事業活動の存在又は当該法人の商品,サービス等の優越性を訴える宣伝的効果を意図して行われたものであると認められることが必要」と下級裁判決が出ています(東京地判)。
 本事案では、そもそも相談者が「宣伝目的で行うものでは」ないとしています。また飲料水を仕入れた先が問屋であることから、飲料水へ何らかの宣伝的効果を付加することはされないと考えられます。これらの事情を踏まえれば、飲料水の提供が宣伝的な効果を有しているとは、客観的に見ておよそいえません。
 広告宣伝費の要件に該当しませんので、寄付金の検討を行うこととなります。とはいっても飲料水という「その他の資産」を「無償の贈与」で少年団へと渡していますから、容易に寄付金に該当することがわかります。
 したがって、本事案では法人税法上の寄付金に該当し、支出先が国等ではないことから、一般寄付金として取り扱うこととなります。

 

4.元ネタ

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp